怒られてしまうかもしれないけれど、私は真剣にそう考えています。声楽学習に科学的なアプローチを取り入れたり、システマチックなカリキュラムを考えている方々からは「何を馬鹿なことを言ってるんだい」と叱られそうだけれど、私の体験上、そう考えるとスーッと納得できることが多いのです。
まずはオカルトの定義(研究社「新英和中辞典第6版」)をします。
occult 【形】
T 神秘的な, 不思議な; 超自然的な, 魔術的な, オカルトの
occult arts 秘術 《錬金術・占星術など》.
(the) occult sciences (神)秘学.
U [the 〜; 名詞的に; 単数扱い] 神秘的なもの, オカルト.
語源 ラテン語「隠された」の意
次に、分かりやすい例をいくつか挙げると…
息は背中(あるいは脇腹)に入れる
息は肺にしか入らないから、背中に入れるのはナンセンスというのは簡単だし、科学的には背中に息は入らないのは事実。でも、先生の注意を受けながら、あれこれやっていると、確かにちょっとだけだけど、背中や脇腹に息が入るんですよ。私のレベルだと「ちょっとだけ」だけど、キング先生はあたかも背中に天使の羽根が生えていて、その羽根で羽ばたくかのように背中が動いて「こりゃ確かに息は背中に入っとるわい…」って感じになります。
声を胸に響かせる
私はよく「もっと胸に響かせて!」と注意を受けます。あれこれやっていると「そう、それ!」と言われます。確かにその時はあたかも声が胸に響いているような感じになります。胸に手を置いて声を出すとビビビ〜ッてきます。でも胸の中は空っぽではなく、筋肉も脂肪も骨もあるし内臓(肺や心臓)だってある。心臓の中は血液で満たされているし、肺は風船のイメージがあるけれど、実際は気管支や肺胞があってスポンジのようなものだし、一体どこに声が響く場所があるってんだい。でも、やってみると「声が胸に響く」としか表現できない感じになるんだよね。
音は上から取る
音が下がり(フラット)気味の時に言われます。フラットしている時に言われるのだから、シャープめに歌えばいいと考えるのが科学的(?)かもしれませんが、それでは単に音がうわずるだけで上から取ったことにはならない。音程というのは上であれ下であれズレていたら気持ち悪いものです。あれこれやってOKもらった感じでは「上から取る」と言うのは、声を一度頭の中に持っていって、頭の中でグルンと廻してから下方向に出すって感じですかあ…ってこれも充分オカルト表現だなあ…。
こんな感じで、ちょっと注意して見渡すと、クラシック、ポピュラー問わず、歌や発声に関する本やサイトにはこのような理不尽な表現が満載です。キング先生はオカルト表現の少ない先生だと思うけれど、それでも皆無というわけではありません。
つまりつまり何が言いたいかって言うと、このような「理不尽さ」はまさに「オカルト」であり、それゆえ私は「声楽学習はオカルトである」と思っています。だから、声楽の話をすると、どうしてもオカルト寄りの表現方法を取らざるを得ないって事です。
このブログの中でも、いっぱいオカルト表現が出てくると思いますが、そこは勘弁してください。でも、私の場合「オカルト」だと自覚して書きますので、読んでくださる方々もオカルトだと思って読んでください(笑)。
と言うか、私の場合、オカルト表現と出会っても、先生のレッスンを受けることで、そのオカルトを現実化してゆくことができる(あるいはできる機会がある)から、オカルトでも困らないけれど、独学で歌の勉強をしている人(たくさんいると思うんだよね)はオカルトを現実化する機会がないよねえ…。そこが独学の壁ってことかなあ。
posted by stone at 19:41|
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発声法のエッセイ