2009年03月27日

初心者は安い洋銀フルートで十分?

 フルート界には「初心者は安い洋銀フルートで十分。上達するにつれ、頭部管銀、管体銀、総銀とフルートを買い換えていくのが良いのであって、最初から総銀なんかを買ったって、吹けるはずがない。大切なのは、高い楽器を持っていることではなく、腕前を磨くことだ」というのがあります。この手の理屈(!)は、特に中高生たち、吹奏楽部のフルート吹きさんたちが、たくさんたむろっている掲示板などで、よく目にします。

 全くの間違いではないと思うし、この理屈で救われる子もたくさんいると思うので、まんざら屁理屈と、こきおろすことはできないのですが、でもやっぱり、オジサン的には「えーーー」って思う理論展開なわけです。

 まず、この理屈で救われる子とは、どんな子か。それは貧乏人の子。具体的に言えば、学校備品の楽器でフルート吹いている子とか、安いフルート(失礼)しか親に買ってもらえない子とか、バイトのお金を貯めて、精一杯背伸びをして安いフルート(失礼)を買った子。こんな子が救われると思う。

 私自身も貧乏人の子だったし、中学生の頃は吹奏楽部に入りたかったけれど、楽器を買ってもらえなかったため(ウチの地元の学校では、吹奏楽部は自分の楽器を持参するのがデフォルトなのね)、泣く泣く吹奏楽部への入部を諦めた私(なので、時折パーカッションでトラをやってました)ですから、そんな子の気持ちは分かるつもり。

 だから、最初に手にする楽器が安い楽器になるのも仕方がないと思う。ヤマハのスクールモデルや、安い中国製のフルートをうれしそうに吹いている子を見ていると、私は「がんばれ!」と声をかけたくなるし、「初心者は安い洋銀フルートで十分」という言葉を支持したいと思います。

 それに、実際、初心者、それもスポーツ嫌いの女子中学生あたりが、いきなり総銀フルートを入手したところで、やっぱり吹きこなすことは無理だと思う。だから、結果としては、この理屈は正解だと思う。

 でもね、その先の買換えってのが、納得いかないんだ。なんか、所持しているフルートを武道の胴着の帯の色か何かと勘違いしているんじゃないの?って思うのよ。

 洋銀フルートを吹いている人は、総銀フルートを吹いている人よりも格下なの? 洋銀フルートでも、頭部管銀と管体銀では、管体銀の所有者の方がエラいの? まだ下手な子が管体銀フルートを持っているのは生意気なわけ? 管体銀フルートを持っている後輩は、持っているフルート管体銀だからと言って、頭部管銀の先輩にいじめられても仕方がないの? …なんか訳分かりません。でも、この手のことで、よく若い笛吹きさんたちの掲示板が荒れてますよね。おそらく、彼らにはこの手の問題は、かなり切実な問題なんだろうと思います。

 オジサンが思うには、上手な人は、どんなフルートを持っていても上手に吹けると思うし、たとえ総洋銀フルートを吹いても、アンコンで上位入賞できるし、人の心をゆさぶるような演奏ができると思う。

 下手な人はどんな高価なフルートを使っていても下手だと思う(胸が痛い…)けれど、上手な人が高価なフルートを持っていれば、やはり表現力の幅が広がって、安いフルートで演奏するよりも、より心に染みる演奏ができるとも思う。

 上手な人同士の中で、腕前の優劣を競うなら(例えば音大入試とか、コンクールとかね)、高価な楽器を所有している方が、たぶん有利でしょう。

 要は、所持しているフルートの値段なんて、道具としての値段の差でしかなく、その道具をどれだけきちんと使えるかが大切なポイントなんだと思う。だから、最初は安い楽器であっても、上達するに従って、より高価な楽器にシフトしていくのは当然だと思う。けれど、なぜそこで順番を踏んでいかないといけないの? 総洋銀の子が、いきなり総銀フルートやゴールドフルートに行ってはいけないわけ? 

 ではなぜ、この手の買換えの話は止まないのかと言うと、貧乏人の子の気持ちを救って上げる以外にも、ある種の真理をついているからだと思う。そのある種の真理とは、おそらく経験則でえられたものであり、だから、根拠が分からなくても、人は何となく納得してしまうのだと思う。

 では“そのある種の真理”とは何か…? それは“体の成長”ではないかと思う。

 一般的に行って、フルートは値段が上がるにつれて、吹きこなすのに息の力が必要になってきます。幼い未完成な子どもの体に、強い息を要求するのは酷な話だし、それが原因で体を壊すことや、体が変形してしまうことだってありうる。それに音楽を志す子の大半は、運動が嫌いで、体が弱く、筋肉が未発達な脆弱な子が多いこともあり、そんな子たちに無理強いはできないわけだ。そんなこんなが、先の理屈へと結実していったのだと思う。

 だから、すでに体もできあがり、お金もそれなりにあるオジサンから見れば、えーーーっと思う理屈なんだけれど、成長期にあり、お金にだって不自由している若い子たちには、これは一面の真理なのだと思う。

 だから、あの理屈は子ども向けの理屈であって、大人には全く当てはまらないと思います。

 大人は…最初から、大人買いよ! ババンと、高いフルート、買っちゃえ! 内需拡大だあー! 人生、残り少ないぞ、最初からお気に入りのフルートで遊んじゃえ! 今が一番体力あるのか、大人だぞ。段階踏んでいるうちに、体が弱ってきたら、いい笛が吹けなくなるぞー。

 …てね(笑)。

 ちなみに、もしも息子君がフルートを買ってくれとか言い出したら…たぶん、ヤマハのYFL-221を買ってやるかな。Eメカすら付いていない、一番安い奴。「これで苦労しろ!」って感じかな? もっとも“苦労”と言ったって、音程的にはバッチリだし、音色的にも問題はないだろうし、音量的にはむしろ、アゲハよりもいいんでないの? 何か、文句あっか!って感じ。もっといいフルートが欲しければ、大人になって、自分のサラリーで買え!って感じでしょ。

 「僕は、フルートで音大に行くんだ」と妄言を言い出したら、即、家から追い出します(笑)。自分の好きな道に進みたければ、自分でその道を切り開いて来いってわけだ。

 バッチ、コーーイ! ってんだ!