2012年08月20日

ヌーボ社のプラスチック製フルートを、衝動買いしてみた

 ヌーボ社の“スチューデント・フルート”を衝動買いしてみました(笑)。

 だって、お値段は、なんと約1万5千円(!)。総銀フルートの約1/50、お安いフルートとして有名なヤマハYFL-221の約1/4。こりゃあ、衝動買いするしかないでしょ(爆)。ならば、衝動買いしちゃえ〜って感じで買っちゃいました。

 ちなみに材質は、標題の通り、プラスチック!(笑)。重量は約230g。通常のフルートは、洋銀C管で約400g、総銀H管Eメカ付きで約500g程度だから、通常のフルートの約半分の重さ(軽さ)! こりゃあすごい。

 プラスチック製のフルートと言うと、少し前に、ゴウ社から発売されたニューボイス・フルートがあります。約13万円だそうです。元々プラ製のフルートに興味のあった私は、ニューボイス・フルートが出た時に、思わず購入してしまおうかと思ったのですが、お値段がお値段だった(だって、この値段なら、ヤマハの221が2本も買える!)ので、ちょっと引いてしまったし、試奏してみたら、私には難しくて、低音部も高音部もロクに発音できなかったので、購入を見送ったのです。

 今思えば、店頭試奏用のニューボイス・フルートは調整の狂った楽器だったのかもしれませんし、そうでなく、本当に私には難しい楽器だったのかもしれませんが、どちらにせよ、音楽の神様が「お前はこの楽器を買うべきではない」と言ってくれたのだと思ってます。

 閑話休題。今度のヌーボ社のプラ製フルートは、とにかく、1万5千円なんです。もしもハズレでも、笑って“ブログのネタ”にできるでしょ? だから、安心して買ってみました(笑)。それもアマゾンの通販で(爆)。だって、プラ製って事は、金型成形による工場生産品だし…個体差? プラモデルに個体差なんてないでしょ? 個体差が無視できるなら、試奏する必要も特に無いわけだし、吹けなきゃ吹けないで、それもまた楽しいので、何も考えずに(もちろん)試奏もせずに買っちゃったわけです。

 で、吹いてみたら、意に反して、ちゃんとした楽器だったので、ちゃんとした記事を書く事にしました。

 ちなみに、ヌーボ社は香港の会社らしいですね(製造は中国本土だけど)。
 
 
 で、買ってみて、吹いてみた感想です。

 まず、チャイナな製品だし、値段もハンパなく安いし、プラ管だし、どうせオモチャだろうと思ってましたが、これは楽器です。かなり、コスパは良いですよ。

 プラ製だし、見た目は安っぽいです(笑)。ただ、ボディカラーは黒だし、ところどころにステンレスパーツや銀色の塗料で塗られた部品も使っているので、遠目で見ると、木管フルートに見えなくもないかも…です(爆)。

 持った感じは、当然ですが、軽いです。しかし、三点支持をした時の右親指と左人指し指の付け根が当たる部分に、ゴム状のパーツが貼られているので、結構安定して構えることが出来ます。

 ちょっと吹いた感じも、普通のフルートですね。どの音も良く出ます。“スチューデント・フルート”という名称どおり、初心者をターゲットにしているのかもしれません。

 あえて難を言えば…第三オクターブの発音は、総銀フルートよりも支えを必要としますし、Eメカは付いてません。なので、本当の初心者さんには、実は難しいかもしれない(笑)。まあ、初心者さんでも、中低音を中心に演奏するなら、問題ないでしょう。…もっとも、私は普通に最高音のCまで発音できました。私程度(アルテ15課学習中)なら、それなりに使えますよ。

 ちなみに、オフセット、カバードキー、C足部管付き、Eメカ無し、という仕様です。実に初心者向けの仕様です。

 音程もチューナーで測定してみましたが、正確でした。

 音の飛び…と言うか、どれくらい遠鳴りするかは…よく分かりませんが、吹いてみた感覚では、洋銀フルートと、そんなに変わらないんじゃないかな? p-fの幅も洋銀フルート程度かなって感じました。

 音色的には、総銀と比べて、高い方の倍音がちょっと少ないような気がする(つまり、音色的には落ち着いた感じがします)ので、近代曲よりもバロックなどの方が向いているかもしれません。癒し系の音色…って言えるかもしれません。

 とにかく、プラ管と言うと、リコーダーっぽい音色を想像する人がいるかもしれませんが、音色は普通にフルートです。たぶん、フルート吹き以外の人にブラインドテストをしたら、プラ管だと見抜けないかもしれませんね(フルート吹きだと、バレるかも:笑)。あえて言うと、木管フルートに似た音色かもしれませんが、木管ほどは鳴りません。

 実は、このフルート、キーメカ的には、普通のフルートと同じ構造をしています。ですから『吹いてみたけれど、音が出ない!』という場合は、キーメカの調整が必要です。

 安い中国製フルートって、調整が出来ないのが欠点ですが、このフルートは、調整ネジとドライバが付属してますので、必要なら調整できちゃうんです。ですから、音が出づらい時は、調整をしてみる事もできます。

 ただね、安物だし、プラ管だし、中国製だし…一般楽器店で調整を引き受けてくれるかどうかは、ちょっと疑問です。

 まあ、調整を引き受けてくださる職人さんがいらっしゃれば任せた方が良いかもしれませんが、この手の楽器は、自分で調整にトライしても良いかもね(笑)。まあ、色々いじって調整に失敗して、どうにもならなくなったとしても、それは授業料と言う事で、また新しい楽器を買えばいいんだし(とにかく安いんだからね)。だって、プロに三回も調整を依頼したら、新しいのが買えちゃう程度の値段だから、金額的にはプロに調整を依頼するのも、バカバカしいしねえ…。

 ちなみに、私が購入したものは、ばっちり調整済みで、私の手元に届きました。

 タンポはシリコン製パッドを使っているので、簡単には破れたり劣化したりはなさそうです。一応、タンポも交換できる構造になっていますが、値段が値段ですから、壊れたり、オーバーホールの必要性を感じたら、買い換えてもいいんじゃないの? たぶん、修理するよりも、新品を購入した方が安いと思うし…。

 ちなみに、このフルート、メンテナンス・フリーだそうです。たぶん、水洗い可能です(笑)。

 ま、実際のところ、どんな音がするのか興味があるでしょう。では、私がちょっくら演奏してみよう…かと思いましたが、私よりも、もっとお上手な方がYouTUBEで吹いている画像がいくらでもあるので、その中からお一つ、ここに貼って、お茶を濁します(笑)。

 ね、なかなか普通のフルートでしょ。

 私は自分のスチューデント・フルートに“プラ子”という名前を付けてみました。だって、プラ子はプラ子でしょ? とりあえず、ミヤマ[自作ヴァイオリン]の隣のフルートスタンドに置きっぱにしてみました。だって、錆びないし、痛まないし、組み立てたまま放置して、吹きたい時にちょっと吹いてみる…って使い方でいいかなって思ってます。

 もちろん、真剣にフルートを吹く時は、アゲハ(アルタス1307)を使います。だって、音色は全然アゲハの方がいいし、私好みだもの。それに、プラ子って軽いから、これに慣れちゃうとアゲハを重く感じて、ロクに吹けなくなっちゃうでしょ(笑)。

 吹き心地に関して言うと、値段がほぼ一緒のチャイナ娘よりもずっと良いです。でも、総銀のアゲハと比べると…だいぶ劣ります。

 まずプラ子は息がたくさん入っちゃいます。簡単にはオーバーブローしない代わりに、pの時に、ちょっとばかり息が多めに必要です。そういう点では、息の支えが弱くても吹けるフルートかもしれません。でも、表現力としては、アゲハにだいぶ劣ります。

 あと、バネがやや硬くて、キーの抵抗や跳ね返りが強いし、速いフレーズを吹くのは大変かもしれない。また、キーの動作にも遊びが多いように感じます。それはプラ管だからと言うよりも、チャイナ娘にも同じような傾向が見られるので、安価なフルートに共通した、キーメカの精度の低さが原因だろうと思われます。

 と言うわけで、プラ子をレッスンに持っていく勇気は…今のところ、ありません。ってか、ミニヨン・エチュードをプラ子で吹くのは、表現力の不足から、キビシイですねえ…。やっぱりレッスンの時は、アゲハかな? それに楽器の反応も今一つなので、アルテ15課にあるような様々なプラクティスに対応するのも難しいです。そこらへんが、この楽器の限界かな?って思います。

 ただ、普通にメロディを吹くには不足はないので、ジャズのセッションの時は、アゲハではなく、プラ子を持っていこうかな…なんて思ってます。やはり、お酒の席にアゲハを持っていくのは…怖いよね。

 あ、そうそう。このプラ子には、色々とおまけが付いていて、それも面白いですよ。

 例えば、足部管。通常タイプのC足部管の他に、D足部管が付いてます。HじゃなくてDね(笑)。なので、D管として演奏する事が可能です。D管、つまり、トラヴェルソ感覚で演奏できるって事だね。ま、あくまでもトラヴェルソ感覚ですが…面白いかもね。面白いだけで、使い道はないと思いますが…。

 あと、リッププレートが取り外し可能(!)で、2タイプのリッププレートが付属しています。私は標準タイプのモノを使ってますが、リコーダーのような形状でクチでくわえられる突起がついたタイプのリッププレートもあります。この新型リッププレートを付けると、どんな人でもリコーダーのような感じでフルートが吹けるようになるそうです…が、私が試したところ、この新型リッププレートを取り付けると…不出来なアルトリコーダーに早変わりします。

 “不出来な”と言うのは、色々と欠点が目立つからです。

 まず、この新型リッププレートを取り付けると、音量が激減します。通常のリコーダーよりも小音量になります。それと低音域はまず使えなくなりますし、高音域も上の方は無理なので、音域的にもアルトリコーダーのそれに近い感じです。下の方の音域が使えればテナーリコーダーのようになるはずですが、ちょっとモッタイナイ感じです。まあ、正直「新型リッププレートは、思ったよりも、使えない」って印象です。

 クリーニングロッドは付属していません。その代わりに、クラリネットで使うようなスワブが付いてます。そのスワブの重りの部分が、クリーニングロッドの先端のようなカタチになっていて、反射板の位置確認ができたり、頭部管の内部の掃除ができたりして、これはなかなか良い付属品です。これは普通のフルートにも欲しいかもしれない付属品です。

 グリスが付属してまして、たまにシリコンゴムの部分に塗ってやらないといけないようです。まあ、たまにコルクの部分にグリスを塗らないといけない木管フルートに、感覚は近いかもです。

 付属のケースは、軽くていい感じですが…ちょっと大きいですし、デザインもどっちかと言うとメンズっぽい感じになってます。

 あと、管の長さは普通のフルートと同じですが、太さは全然違います。見た目の太さは木管フルートと同等です。ただ、楽器の内径は通常のフルートとほぼ同じです。なので、そういう意味では、普通のフルートと構造的には一緒なのですが、材質がプラスチックであって、当然、金属管よりもかなり肉厚なので、ジョイント部分の内径はかなり大きいので、通常のフルートとは、頭部管の交換はできません(当然?)。

 ゴウ社のニュー・ボイス・フルートが『プラスチックで(通常の)フルートを作ってみました』というスタンスならば、このヌーボ社のスチューデント・フルートは『プラスチックで木管フルートを作ってみました』というノリなのかもしれません。
 
 
 とにかく、このフルートは、激烈に安いし、大人が遊びでフルートを始めたいと言うなら、これも十分アリかもしれません。または、自分のメインフルートをオーバーホールに出しちゃったけど、その間、フルートが吹けなくて寂しい〜って人は、サブフルートとしても、いけるかも。

 たぶん、位置づけ的には、総銀フルートがグランドピアノならば、このプラ管フルートは電子ピアノかもしれません。自分の楽しみのために音楽演奏をするなら、プラ管フルートで十分ですが、マジな室内楽演奏やオーケストラ演奏などの音色や表現力を問われるような場面では、ちょっと足りないかな…。実に、カジュアルなフルートですよ。

 値段も値段だし“スチューデント・フルート”という名称からも分かるとおり“お試し”とか“サブ”とかの目的ならば、十分イケると思います。私は、戸外や酒場での使用とか、遊び吹きが前提なら、このフルートでも良いのではないか思います。もちろん、マジで吹く時は、迷わずに総銀フルートであるアゲハを手にします。

 ヌーボ社のスチューデント・フルートは、良いフルートだし、コストパフォーマンスもとても良い楽器だと思いますが、所詮は、廉価なフルートだし、チャイナ製だし、プラ管だし、過大な期待はしない方が良いです。安価な洋銀フルートの置き換え程度のレベルに達していると思いますが、総銀フルートやゴールドフルートにとって代われるほどの楽器じゃないです。

 フルートとしては安価という事もあり、この楽器でフルート世界に飛び込むのは、アリでしょうね。で、このプラ管フルートに飽きて、次に買い換えるなら、洋銀系のフルートに買い換えではなく、総銀フルートか、あるいはいっそ、木管フルートに買い換えるといいかなって思います。その程度の力が、この楽器にはあると思います

 以上は私の私感です。私はフルートの音と、その材質には、それなりの関係性があると信じている人です。なので、所詮、プラ管はプラ管です。でも、世の中には『フルートの音は、その材質とは関係ないよ』っておっしゃる方々がいらっしゃる事は知ってます。おそらく、そういう方だと、このフルートに関する意見もまた違うんでしょうね。

 それにしても、プラ管の音って、案外、捨てたもんじゃないですよ。

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posted by stone at 03:30| Comment(30) | フルートのエッセイ