2013年06月18日

ご飯の大盛りは歓迎だけれど、タクシー料金の大盛りはご遠慮願いたい

 声楽のレッスンに行きました。

 この日は、仕事が一段落着いたのが、いつもの時刻よりも少々早かったのですが、そこで誠実に時間一杯までいると、次の事件が勃発するのが常なので、区切りの良い事を幸いに職場を飛び出してしまいました。さっさとタクシーを呼んで、早めにレッスンに向かう事にしましょう。

 今日のタクシーの運転手さんは若い男性でした。「お客さん、お好きな道とかありますか?」と何やら意味不明な質問をしてきました。道に好き嫌いとかある人がいるんだろうか? 少々不思議に思ったものの、「特に道に好き嫌いはありません」と答えたら「では、私の方で道を選んで参ります」とか言うわけです。一体、何なんだろうと思っちゃいました。

 で、タクシーは発進して、順調に進み、いつもの曲がり道を曲がらずに直進していきます。「ん?」と思っていると、その次も曲がりません。どの道も曲がらずにドンドン直進していきます。で、ドンドン目的地である先生のお宅から離れていきます。で、かなり行き過ぎた所で、ようやく曲がりました。メーターを見たら、すでにだいぶな金額になってます。なのに、目的地に着くどころか、むしろ遠ざかっている状態…。

 「だいぶ、遠回りしているんですね…」とボソっと言ってみました。「今日は天気も悪いので、こっちの道の方が…」と運転手さんが返事をしてきたので「この道を通っているって事は、次は○○の道に入って、そこから△△をグルッとまわっていくおつもりですか?」と尋ねてみました。

 運転手さん、返事をしませんでした。

 「思いっきり、逆方向に走って、それから戻っていくわけですね。これだと、いつもの道の倍以上の距離になるし、時間的にもかなりロスしますね…」と言い、重ねて「私は毎週のように、あなたの会社のタクシーを利用させてもらっていますが、他の運転手さんはいつも最短ルートで、ササっと目的地まで到着してくれてます。だから、今のメーターの値段と同じか安いくらいで到着してますが、今ここは、まだ道の半分も来てませんよね。いったい、いつになったら到着するんでしょうね」と、これまたボソと言ってみたら、運転手さん「メーター、切ります!」と言って、メーター止めちゃって“回送”にして走り出しました。

 こいつ、私を見て、土地勘のないオッサンと判断して、遠回りして、タクシー料金を盛るつもりだったな〜。

 メーター切ってから、運転手さん、自分はいかに誠実な運転手であって、いつもお客さん優先の運転をしているかなどと、なにやら弁解めいた話をしはじめました。まるで、私が会社にチクるのを阻止しようとしているかのようでした。…別に、途中でメーター切ってくれたおかげで、タクシー代金的には、いつもとあまり変わらない額だし、今日は時間的に、少々の余裕もあるので、遠回りも気分的にはそんなに負担じゃないし。だから、君の事を会社にチクるつもりはないけれど、その態度では、最初から盛る気まんまんだったと言っているようなモノじゃないか。

 人をだますつもりなら、もっと老獪に、だまされた人も良い気分になるように、だまさないとね。まだまだ、だましのプロとして、半人前だな。

 とりあえず、そんな感じで、長距離(笑)ドライブを楽しんで、定刻の少し前に、先生のお宅に到着しました。

 私がレッスン室に入った頃は、妻はまだいなくて、前のレッスンの方がいらっしゃいました。確かこの方は…門下にもう一人いらっしゃるテノールの方? 残念な事に、レッスンは終了していたらしく、すでに雑談タイムに入っていらっしゃったので、歌声は聞けませんでしたが、どうやら、メンデルスゾーンの『エリア』の中の曲を練習していたようです。テノールでエリアのソロとなると…39番『その時、正しい者は御父の御国で』って奴ですかね? キング門下じゃ、絶対に聞けない曲です。門下が違うと、選曲も違うわけですね。この方が、今度の発表会に出演されてるかどうかはまでは、私、知りませんが、きっと、なかなか面白い発表会になるんじゃないかな?

 妻はまだ到着していませんでしたが、時間もモッタイナイという事で、私のレッスンから始める事にしました。

 最初はハミングのロングトーン練習から。ただし、普通にハミングのロングトーンをするのではなく、私がハミングで「ん〜」と言っている間に、先生がバックのピアノの和音を次々と変えていくので、どんな和音の時でも、ハミングをきれいに和音の上に乗せるという練習をしました。難しくはないけれど、ちょっとでも音程が揺れると、すぐに汚い和音になるので、ちょっと集中力が必要な練習でした。単音に合わせて歌うのではなく、和音に合わせて歌う練習の第一段階のような練習でした。

 この練習をしている最中に妻が到着しました。

 ここから先は実際に声を出して行ないました。声を鼻腔に集めて顔面に響かせる練習をしたり、力まずに歌う練習や、なるべくノドを鳴らさずに歌う練習など、私が苦手とするモノを、ことさらに選んでの発声練習です。Y先生の発声練習は、声出しではなく、ヴォイス・クリニックのような練習なので、発声練習をしていても、楽しいし、色々と自分の声の事が分かって、楽しいです。

 先生がおっしゃるには、人間は同時にいくつものを行なう事はできないのだから、一つ一つをきちんと瞬時に連続して行なう事が大切で、そこにかかる時間が短ければ、他の人から見て、同時にいくつもの事をしているように見えるそうですが、実際は、ちゃんとしたダンドリのモトで、決められた手順を手早く行なっているだけなんだそうです。

 つまり、高い音程を歌う時も、いきなり目的とする音を出しているわけでなく、まず、腹筋で息を支える、ノドをことさら脱力する、下アゴを落とす、軟口蓋を上げる、目を見開く、などの行為をしてから、ノドに息を送り込んで発声をしているわけで、いきなり高い音を出しているわけじゃない…って事なんだそうです。

 で、私は言うと、これらの事を(不十分ながら)同時にしようとして、うまくできずに、それで高い音の発声に失敗したり、音程が不安定になったりしているというのが、先生の分析です。

 なので、これらの手順を一つ一つゆっくりと順を追ってやってみました。すべてに不器用なのはともかくとして、ことさらダメなのが“軟口蓋を上げる”という部分。実は音程の作り方にも色々とあるのだけれど、クラシック声楽の場合、軟口蓋を上げ下げして音程を作るのが一般的なやり方なんだそうです。だから、高音を歌う時は、軟口蓋をきちんと上げるというのが、肝になるわけだけれど、私はこれが遅くて不十分なので、高音が上手くないんです。

 では、軟口蓋を上げるのが、同時ではダメなら、いつの段階で上げるかですが、実はこれ、前の音を歌っている最中に上げてしまうのだそうです。無論、前の音を歌っている最中に軟口蓋をあげても、音程を変えてはいけないのです。ただ、音色が変わるのはやむを得ないというか、高音に行く前に、高音の準備のために音色が変わってしまうのは、普通の事なんだそうです(上手な歌手は、軟口蓋をあげて、次の音の準備をしても、音色の変化を客に気取られないように歌うわけだけれど、それはまた、次の段階の話だそうです)。

 と言う訳で、前の音を歌っている時に、次の音のために軟口蓋を上げながら歌う練習をしました。これ、結構面白い練習でした。

 前の音を歌っている時に、軟口蓋をあげて音色を変えていくのですが、音程が高くなってくると、軟口蓋をあげても音色の変化が少なくなっていきます。音色の変化が無くなったところが、その人の高音の限界なんだそうです。つまり、もうそれ以上は軟口蓋があがりませんって事なんです。具体的にどうなるのかという見本を先生がやってみせてくださいました。ふむふむ、そうなるわけですね。で、だから、先生はバリトンであって、軟口蓋をロクに上げずに、GとかAbとか出しちゃう私は(まだまだ軟口蓋を上にあげる余地が十分にあるので)テノールってわけなんですね。そうやって、その人のハードウェア的な声域の限界を調べていくわけだ。なかなか面白いです。

 で、次は、妻がよくやっている「きらきら星」を、私も歌ってみました。一回歌っては、転調して半音あげて、また歌っては転調しての繰り返しで、どんどんキーが高くなっても、声の調子は変えずに、音程だけを変えて歌っていく練習です。高いところになると、ついつい力みたくなる私ですが、低いキーを歌っていた時と同じ調子で歌うわけです。ま、それが上手くできない自分が、悩ましいです。

 特に最高音がAになると、その直前の最高音がAbまでとは、明らかにカラダの使い方が変わる事が自分でもよく分かりました。まだまだAは、アゴの力で歌ってますね。そして、Aだけでなく、その下のGあたりの発声もアゴに頼るようになります。最高音がAbの時は、そんな事なんて無いのに、最高音が半音高くなるだけで、ガラっと発声が変わってしまうのは、良くないことだけれど、面白いなあと思いました。まあ、面白がっていないで、ちゃんとできるようにしないといけないのですが…。

 つまり、まだまだAは出せても、ホンモノじゃないって事です。ホンモノでない以上、安心はできないし、音色も美しくないって事です。

 先生がおっしゃるには、テノールである以上、Aまでは、その下の音と同じテクニックで発声して欲しいし、Aまでは楽々と発声して欲しいのだそうです。まあ、私も同じ意見ですが(笑)。Bから上は、発声テクニックが変わってくるし、出ないテノールも大勢いるので、できなくても仕方ないのだそうですが、Aが使えないテノールは、歌う曲に大きく制限が加わるのだそうです(厳しい…)。頑張りますよ。

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