2017年12月20日

下手くそな音源でもアップする理由

 世の中には、完璧な演奏の音源しかアップしてはいけないという、頑なな考え方の人がいます。そういう人に言わせれば、不出来な演奏や、下手くそな演奏の音源など、アップしてはいけないし、アップすること自体が恥であり、わざわざ恥をかくためにアップする人の気が知れないんだそうです。

 つまり子どものピアノ発表会の音源とか、アマチュア音楽家の演奏とか、まだまだ修行中のプロの卵の演奏などは、決してアップしちゃいけないのです。ネットに演奏をアップしてよいのは、完璧な演奏のみ。まあ、プロ中のプロの方の感動的な録音で、ミスした箇所を切り貼りしたり、編集したりして、そうやってミスを取り除いた完璧な音源だけがアップされるべきって事なんでしょう。

 つまり、CDなどで販売される音源と同レベルのモノだけしかアップが許されない…って考えているから、先の暴言を平気で言えちゃうんだと思います。

 ふーん、世の中には色々な考え方の人もいるし、そういう人が暴言を吐けるのが、自由主義社会だし、言論の自由ってヤツだから、その発言自体は良くも悪くもないのだけれど、世の中には、そういう考えなしの大声によって、無意味に萎縮しちゃうメンタル弱々の人もいるんだから、その手の暴言は、あまり感心できません。

 だいたい、完璧なモノしか発表するべきでないなんて、発想が昭和的なんだよね。今時の発想じゃないよね。

 そもそも、YouTubeが開発された動機は、友人たちにパーティーで撮ったホームビデオを配布するために考えられたシステムなんだよね。最初っから、ユルユルの画像を、仲間内で和気あいあいと楽しむために作られたシステムなわけです。

 素人レベルの画像をみんなで共有して楽しむために作られたもので、完璧で商業レベルのモノをアップするためのシステムではなかったわけです。

 そういう意味で考えれば、そもそもアップされる画像や音源なんて、玉石混交が大前提であり、完璧な演奏もあれば、微笑ましい演奏もある…そういう混沌とした状況を受け入れて楽しむのが、21世紀の発想なんだよね。

 みんな違って、みんな良い。誰もに輝く瞬間があり、誰もが自分の人生の主役! つまりそういう事。発想が昭和な人は、そういう事が分からなくて『世間に発表する』って事が『限られたエリートの方々だけに許された特権的な行為』になっちゃっているわけよ。だから「お前ら、シロートのくせして、生意気なんだよ!」って、勝手に義憤を感じちゃっているわけです。厄介だね。

 ちなみに私は昭和生まれだけれど、そんなにガチガチのジジイじゃないので、声楽であれ、フルートであれ、チャンスがあれば、自分の演奏音源をアップしちゃう人です。

 でも頑固で昭和なジイさんたちは、次のような事を言ってきます。

 「下手くそな演奏なんてアップして恥ずかしくないのか!」

 うーん、別に恥ずかしくはないです。だって、やるだけやって、これが精一杯の今の私の実力なんだから、未熟だな、下手だなとは思うけれど、恥ずかしくはないですよ。“自分は完璧な演奏ができるはずだ”などという傲慢な気持ちがあったら、恥ずかしいかもしれないけれど、これでも結構、謙虚な人柄だし、分を知っていますので「まあ、こんなもんだよね」って思っているわけです。

 「下手な演奏をアップするなんて、失礼にも程がある」

 誰に対して、どんな失礼があるのかな? もちろん、期せずして偶然私の下手くそな演奏を聞いてしまった不幸な人はいらっしゃるかもしれないけれど、それはあくまでも不幸であり不運ではあるけれど、失礼とは違うでしょう? それにだいたい、音源ファイルをクリックした段階で、自己責任ってヤツが生じると私は思うんだよね。今から聞く演奏は、天下の名演奏かもしれないけれど、ジャイアンの遠吠えかもしれないわけで、そのあたりの覚悟を決めてクリックをしているわけだから、たとえ聞こえてきたのがシズカちゃんのヴァイオリンだったとしても、それは不幸な出来事であって、失礼なんかじゃないです。

 「下手な演奏をアップするなんて、失うものが多すぎるでしょ?」

 別に私、何も失わないです。少なくとも、アマチュア音楽家の方で、自分の演奏をアップする事で、多くのモノを手にする人はいても、何かを失う人なんて、いないんじゃないかな? 下手な演奏をアップして何かを失う可能性があるのは、プロの人だけでしょ?

 だから、プロの人は、滅多なことじゃ音源なんてアップしないし、アップする時は、自信のある演奏か、ミスを修正した演奏に限っているよね。だいたい、そのレベルの演奏だったら、ネットに無料であげるよりも、きちんと販売した方が良いしね。

 実際、ネットにあがっているプロの演奏なんて、本人とかマネージャーとかが宣伝のためにアップしたモノなんて、ほんの少数であって、大半は権利関係がうやむやのまま黙ってアップされちゃったモノばかり。限りなく盗品に近いモノと私は認識しています。下手くそな音源がアップされる事よりも、むしろ、そっちの方が問題あるんじゃないのって、私は思いますよ。

 でもまあ、思いもかけずに下手くそな演奏に当たった時は、まさに事故にあったようなものだよね。その驚きとか、不運さとか、不快感は、理解できないわけじゃありません。誰だって、素晴らしい演奏と出会いたいものね。

 だから、音源をアップする側にも、ある程度の気遣いは必要かなって…時々考えます。少なくとも、音源を聞く前にタイトルは誰でも見るわけだから、そのタイトルに「アマチュアによる演奏」である事を推測される文言とか入れるのは良いかもしれません。

 ちなみに私の場合は『限定公開』にしているので、YouTube内でも、グーグルでも、私の音源を直接検索できないようにして、事故は未然に防いでいるつもりです。で、基本的には演奏ファイルはブログの記事に貼り付けちゃうので、私のブログからでないと聞けないようにしています。これで少なくとも私の演奏を聞く人は、演奏者が私である事が前提になるわけだし、ある程度の覚悟を持って聞いていただく事にしています。

 それでも(だいぶ最近は減ったけれど)私の演奏が下手だ糞だ耳が腐るだ恥ずかしくはないのかだとか親の顔が見たいだとか早く音楽やめちまえだとかの罵詈雑言をいただく事があったりなかったりするわけですが、それは文句を言う方が間違っていると私は思いますよ。

 あなたは私の音楽レベルを承知した上で音源をクリックしたわけでしょ? それで文句を言うなんて、ちょっとずるいよなあ…って思います。それとも私の事を、一流のプロの名音楽家であると、誤解されているのかしらね。

 私が自分の音源をアップするのは、自分の演奏力向上のためです。つまり、勉強のためにアップしています。だって、自分の拙い演奏をアップするという前提があるから、音源の収録の時は、キリキリの本気の全力の演奏をするわけだし、それをアップして、皆さんからコメントをいただく事で、多くの事を学びます。それは本当に有り難くって、日常生活だけでは得難い事です。

 なので私は、アマチュアの音楽家の皆さんは、ガンガン自分の演奏をアップしていって、互いに励まし合い学び合ってゆけばいいと思います。

 昭和なジイさんたちの暴言なんかに負けないぞーぉと(笑)。

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posted by stone at 03:30| Comment(6) | 声楽のエッセイ