2019年08月20日

私の好きな懐かしのスターたち その7 ビリー・ジョエル

 ビリー・ジョエルはピアノマンです。

 彼が日本で人気になったのは、ちょうど音楽を聞く媒体が、レコードからCDに切り替わる直前の時代でした。なので、レコードジャケットのデザインが、小さくしても見栄えがするように大味で作られていたので、それをレコードサイズで見た時に、なんともスッカスッカだった印象があります。

 レコードジャケットはスッカスッカでしたが、音楽は濃い目で、アメリカ人であるにも関わらず、サウンドはそんなに能天気ではなく、ちょっとウェットだったのが、日本で大受けしたのだろうと思います。おそらく、彼の気質がアメリカ人というよりもユダヤ人であり、そのサウンドにもユダヤ的なモノが色濃く反映していたからではないかと、私は分析しております。

 私が惹かれたのは、彼のテノールな声と、メロディアスなヴォーカルラインと、複雑に和音進行する曲作りです。なんか、根っこにあるのは間違いなくアメリカ系の音楽なのに、どことなくヨーロッパな感じ、とりわけブリティッシュ・ロックっぽかったんだよね。そこがなんとも好きでした。彼自身は知的な人なのですが、彼のパブリックイメージは労働者階級であって、そのギャップが外国人である私などからすれば、ミエミエで、そこが何とも愉快でした。

 今回紹介する音源は「アレンタウン」です。和訳付きの音源を見つけましたので、御覧ください。アレンタウンというのは、ペンシルベニア州の街で、かつては製鉄業と鉄道と絹織物で栄えた一大産業都市だったのです。それが二十世紀中頃に次々とダメになり、今では景気と治安の悪い古びた街となってしまったという背景があります。歌詞の中に出てくる“ベツレヘム”はイスラエルのベツレヘムではなく、アレンタウンの隣町の名称です。当時は、アレンタウン以上に製鉄業が発展していて栄えていたのですが、一緒にダメになっていったのですが、その後カジノの街として復活したのだそうです。つまり、アレンタウンの住民から見れば、常に「うまいことやりやがって…」とイラつかせる隣人たちってわけです。


 こんな音楽を書ける人が労働者階級なわけないじゃん(笑)。

 さて現在、彼はすでに引退していますが、引退直前に労働者階級のイメージを捨てて「Fantasies & Delusions」というアルバムを発表していますが、これはいわゆるクラシックアルバムで、ソロピアノのための曲ばかりを集めて作られています。たぶん、これは彼の趣味全開なアルバムであって、いわば“最後っ屁”であり、こっちが彼の本質なんだろうなあって思います。

 社会階層というのは、西側の音楽家たちにとっては大切な要素のようです。

 何しろ、社会で生きる人々の大半は労働者階級なのですから、彼らに買ってもらえる音楽を作らなければ音楽家としての成功はないわけです。プレスリーのように、自らが労働者階級出身者なら、素のままでいいのだろうけれど、実は成功した現代の音楽家たちは決して労働者階級ではない人も大勢います。ビリー・ジョエルは中間階級に属する人ですが、同時にユダヤ系アメリカ人でもあり、素のままではアメリカ社会では受け入れてもらいづらい立場だったわけです。それゆえに、労働者階級に受けるように、キリスト教系の人々にも受け入れてもらえるように、パプリックイメージを作ってきたんだと思うし、音楽的にそっちの方向で頑張っていたわけですが、頑張れば頑張るほど馬脚を表していたように思います。

 さて彼の作品も、アバの「マンマ・ミーア」同様に、集められて「ムーヴィング・アウト」というタイトルでミュージカル化されています。日本でも1シーズンほど上演されましたが、その後は聞きません。今でも世界のどこかで上演されているのでしょうか? ミュージカルという音楽ジャンルは、世界的には中間階級〜上流階級のお楽しみであって、労働者階級からは嫌われるものです。労働者階級に寄り添ってきたビリー・ジョエルのイメージからすれば、彼の音楽のミュージカル化は、なかなか難しいですよね。「ムーヴィング・アウト」は、おそらくミュージカルとしては消えてしまうような気がします。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。

にほんブログ村 音楽ブログ 大人の音楽活動へ

にほんブログ村


posted by stone at 05:00| Comment(2) | 音楽一般