2020年11月20日

みんな材質に期待しすぎ

 フルートは、材質によって楽器の価値や質、音色が変わる…と、そういう思い込みが我々にはあります。洋銀よりも総銀が、総銀よりも9Kゴールドが、9Kゴールドよりも14Kゴールドが…なんていう序列を無意識のうちに持っている人もいます。

 事実、この順番で楽器のお値段は高くなっていくし、実際、演奏してみた感じでも、この順に楽器が良くなっているのは感じられます。だから、フルートにとって、材質の違いは大きな問題なのだなあ…なんて考えてしまうわけですが…。

 フルートって、打楽器とは違って、楽器そのものが音源になって音が出ているわけではなく、管内の空気が振動して音になって、それが聞こえるのです。つまり、鳴っているのは空気であって、フルートという楽器は、その空気の入れ物に過ぎないわけです。

 紙コップに入っていても、ペットボトルであっても、美しいヴェネチアグラスのコップであっても、その中に入っている液体が水であるなら、どれもこれも基本的には、入れ物の中のモノは同じモノ…と言えます。つまり、ここで大切なのは「何が入っているのか」であって「何で入れているのか」ではないって事です。

 楽器の値段が高くなるにつれ、楽器としての仕上がりが良くなり、楽器としての質も向上し、音色だって美しいものになるのは、ある意味当たり前と言えます。なぜなら、高い楽器ほど、熟練された職人が手間隙かけて一つ一つ手作りしているからです。良質な手工芸品なのです。そりゃあ素晴らしいに決まっています。つまり、フルートの楽器としての良し悪しは、それを作った職人さんの腕と、その楽器の製作にかけた時間や手間によって決まるのです。材質の違いは(私が思うに)二次的な要素にしか過ぎないだろうと思ってます。

 では、フルートの値段が高価になるにつれ、材質が変わっていくのは、私が思うに経済的な理由が強いのではないかと思われます。つまり、高価な材質を使って作られた楽器ならば、高価な値段をつけて販売されても、購入者は納得します。

 それに、楽器の値段を高くすれば、それに伴って、利幅を増やすことができます。安価な楽器は購入者も多いので、利幅が少なくても、多くの楽器が売れますので、総体としての利益は確保できます。一方、高価な楽器は購入者が限られるので、そんなにポンポンと簡単には売れません。なので、利幅を増やして、楽器を一つ販売する毎に多くの利益を確保しなければなりません。そのためには、購入者が高いお金を出しても納得できるような付加価値が必要なのです。

 その付加価値が、フルートの材質の違いなのだと思います。

 洋銀よりも銀の方が、銀よりも金の方が、高級な材質ですし、高級感が生まれるし、購入者も高級品を購入したという満足感を感じる事ができます。ですから、材質の違いは付加価値の違いであって、楽器の本質とは無縁な要素であると、私は考えます。

 洋銀を材質とした高級フルートは、現存していませんので、比較できませんが、銀を材質とした高級フルートと、金を材質とした高級フルートは、ともに存在します。両者を比較検討した際、そこに明確な優劣の差は無いと私は感じています。あるのは、奏者の好みとステージ映えぐらいです。材質の違いが楽器としての優劣につながるのなら、プロ奏者は全員、金のフルートを使っているはずですが、実際の話、銀のフルートを愛用するプロ奏者も大勢います。つまり、プロの目から見れば、その程度の違いしかないのでしょう。

 一般的に、重い楽器の方が音をよく飛ばす(これはオーディオの基本です)ので、同じ形態なら比重の重い金属で作られた楽器の方が遠くまで鳴ります。なので、比重の重い金で作られた楽器の方が、銀で作られた楽器よりも、遠鳴りがしそうですが、実際のところ、普通に楽器店で販売されているフルートの場合、銀の楽器は標準的な管厚のものが多いのですが、金の楽器の管厚は薄目に作られている事が多いです。これは金の楽器を銀の楽器同様に仕上げてしまうと、楽器が重くなってしまい(女性奏者の多い日本では特に)奏者に負担がかかるので、金のフルートは軽量化がはかられているので、結果的に、金のフルートも銀のフルートも、楽器の重量的にはあまり変わらない事になります。そうなると、遠鳴りに関しての金のフルートのアドヴァンテージ等は、無くなってしまいます。比重が重い金の特徴を活かすならば、金のフルートの管厚は標準〜厚めにするべきなのですが、実際はそうではないのです。

 つまり、そういう事だろうと思います。フルートの材質の違いなんて、その程度の違いしか、本来は無いのです。

 値段の高い楽器ほど、楽器としてよく出来ているとは思いますし、その目安として材質の違いに着目するのは間違ってはいませんが、だからと言って、材質の違いがダイレクトに楽器の良し悪しには直結しないのです。

 そういう意味では、我々は材質の違いに期待しすぎているフシがあるわけです。

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posted by stone at 04:00| Comment(8) | フルートのエッセイ