2019年09月03日

メトのライブビューイングで「フィガロの結婚」を見てきた

 只今、東京・名古屋・大阪・神戸では、メトのライブビューイングのアンコール上映というのがやっています。で、東京は、ドナルド・キーン氏追悼という事で、キーン氏お勧めのオペラを推して上映しています。で、そんなわけで私はキーン氏お勧めの「フィガロの結婚」を見てきました。

 私が見てきたのは、2014年上演版の「フィガロの結婚」でした。キャスト等は次の通りです。

指揮:ジェイムズ・レヴァイン
演出:リチャード・エア

フィガロ:イルダール・アブドラザコフ(バス・バリトン)
伯爵:ペーター・マッテイ(バリトン)
スザンナ:マルリース・ペーターセン(ソプラノ)
伯爵夫人:アマンダ・マジェスキー(ソプラノ)
ケルビーノ:イザベル・レナード(メゾソプラノ)

 特にスーパースターがいない舞台でしたが、アンサンブル系のオペラは、むしろ目立つ人がいない方が良いので、こんな感じの上手い歌手ばかりで固めた上演も、メトっぽくはないけれど、なかなか良い感じです。

 この上演の一番の見どころは、リチャード・エアの演出なんだと思います。舞台セットは回り舞台で、物語の進行に合わせて、ぐるぐる回っていくので、芝居の進行が実にスムーズです。そもそも「フィガロの結婚」はオペラにしては、割と脚本がまともな部類に属します(だから日本人受けするんでしょうね)。で、不足部分を演出で補う事で、演劇とし見ることができるレベルにまで引き上げるわけです。

 それにしても、最近のオペラ歌手には俳優としての資質も求められるわけで、色々大変ですね。ほんの少し前までは、オペラ歌手なんてのは、舞台の中央で棒立ちで歌い、演技力なんて、ほとんど求められなかったのにねえ…。今や、すべての歌手たちが、ドミンゴやカラス並の演技力が求められるわけで、厳しい厳しい。でも、見る側からすれば、それもまた楽しいわけです。

 デブの棒立ち演技なんて、見ててつまらないもんね。

 という訳で、歌はもちろん、演技にも引き込まれながら見ていました。で、私的には伯爵に共感しながら見ちゃったわけです。

 いやあ、伯爵。可哀想…。あの人、あの時代的には普通のオッサンだよね。ちょっと欲張りで、ちょっと浮ついただけの、ただのオッサンでしょ? それなのに、部下たちに良いようにあしらわれて、からかわれて、恥かかされて…。扱いがヒドすぎない? とマジで思ってしまったくらいです。

 共感はしないけれど、感心して見ていたのが思ったのが、ケルビーノ。こういう少年って、いるよなあ…って見ていました。演出のせいか、演技のせいか、ケルビーノという人物にしっかりと血が通っていました。ただ、残念だったのは、着替えのシーン。ケルビーノは少年のはずなんだけれど、胸が豊かすぎて…あのシーンは、ちょっと白けちゃいました。オペラ歌手だから胸を潰すわけにはいかないんだろうけれど、大きな胸は女性の記号だからね、演出家は、そのあたりにも気を配って演出を考えてほしかったなあ…なって思いました。ほんと、あのシーンさえなけれど、もっと芝居に集中できたのに…と思った次第です。

 あと、ほんの端役だし、演じていた歌手の名前も分からないのだけれど、バルバリーナがなかなか良かったんですよ。バルバリーナは、おそらく十代前半くらいの年齢で、ケルビーノに片思いをしている少女で、基本的には「フィガロの結婚」の中では、ほぼほぼストーリーには関わってこない娘です。第四幕の冒頭で、伯爵から預かったピンを無くしちゃうくらいの役割しかなく(アリアもその部分に付いてます)、そのシーンがカットされていても、たぶんオペラは成り立ちます…って程度の役なんです。

 で、このバルバリーナちゃん、演じていたのは東洋人(おそらく中国系の歌手でしょう)で、立派な白人であるスザンナちゃんの従姉妹としては「???」なんだけれど、実におキャンな小娘で、ケルビーノ同様「こんな子、いるよねえ(笑)」と微笑んでしょうくらいに、いい感じの娘でした。

 それと、普通の演出では、ただの意地悪ババアとして演じられがちなマルチェリーナも“恋する(ちょっと年増な)乙女”として演じられていたのは、メウロコでした。ただ、演じていた歌手は、従来どおりのイメージの“太ったオバサン”メイクだったのが残念だったかな? こういうキャラクターにするんならば、伯爵夫人のような美魔女系のイメージで演じた方が良かったんじゃないかと思いました。

 バジオリとか、バルトロとか、クルツィオとか、アントニオとかのオジサン脇役たちは、テンプレートなキャラクターで、これは演出変えてもどうにもならなかったのかな?って感じでした。

 フィガロやスザンナ、伯爵夫人などの主役三人組は、より快活になっていたし、スザンナは、お転婆というか、ちょっとはしたない感じになっていましたが、たぶん年齢設定が若い(十代後半ぐらい?)であるなら、まあ、あんな感じだよね。ただ、演じている人が十代には見えないのが、ちょっとキツイです。

 主役三人に関しては、仕方ないにせよ(実年齢はともかく)もう少し見た目が若々しい方が良いなあと思いました。と言うのも、役として設定されている年齢が、この三人とも、かなり若いのではないかと思われるからです。よくオバサン設定されがちな伯爵夫人だって、たぶんまだアラサーの貴婦人だと思うんですよ。白人って老けて見えがちなので、ほんと、仕方ないんだろうけれど、若い役を演じるなら、若く見えるように、メイクとかもっと工夫してもいいのになあ…って思った次第です。

 というわけで、普通のお芝居として見ても、それなりに楽しめる「フィガロの結婚」でした。歌に関して書かなかったのは、みんな水準以上だったからですよん。


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posted by stone at 05:00| Comment(0) | 歌劇
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