2019年11月12日

今年はオペラ公演ではなく、ガラ・コンサートだったんです

 今、イタリアのトリエステ・ヴェルディ歌劇場が日本中でオペラ公演をしています。例年ならば、当地にもやってきてオペラ公演をしていたはずですが、当地に関しては、今年はオペラ公演は無しで、歌手が三人だけやってきて、アリア・ガラ・コンサートをしました。

 なぜオペラをやらないのか…? 当地では色々な噂が流れていますが、とにかくやらないのです。ああ、残念。私は、地元のホールで、ヨーロッパの歌劇場が行うオペラ公演をとても楽しみにしていたのですが、やらないものは仕方ないです(涙)。

 で、オペラ公演(今年は、ラモン・ヴァルガスを連れて「椿姫」をやっているそうです)の代わりに、行われたガラ・コンサートは「オペラアリアとナポリ民謡のすべて」と題されたコンサートで、前半はオペラアリアを、後半はナポリ民謡を歌ってくれました。

 出演してくれた歌手は以下のとおりです。

ソプラノ:アドリアーナ・イオッツィア(★)
テノール:ブラゴイ・ナコスキ(●)
バリトン:フランチェスコ・ヴルタッジョ(◆)

 ちなみに、ピアニストはロベルト・モレッティ氏で、司会者兼通訳で朝岡聡さんが出演されていました。

 当日のセットリストは以下の通りです。

第一部
  ロッシーニ「俺は町の何でも屋〜セビリアの理髪師」(◆)
  ヴェルディ「女心の歌〜リゴレット」(●)
  プッチーニ「私のお父さん〜ジャンニ・スキッキ」(★)
  ビゼー「闘牛士の歌〜カルメン」(◆)
  ヴェルディ「不思議だわ!…花から花へ〜椿姫」(★●)
  ヴェルディ「燃える心を〜椿姫」(●)
  ヴェルディ「乾杯の歌〜椿姫」(●★)

第二部
  ファルヴォ/フスコ「彼女に告げて」(●)
  カルディッロ「つれない心」(◆)
  トスティ「マルキアーレ」(★)
  ディ・カプア「オー・ソレ・ミオ」(●◆★)
  デ・クルティス「帰れソレントへ」(◆)
  コットラウ「サンタ・ルチア」(●)
  ディ・ステファノ「フニクリ・フニクラ」(●◆★)
  ガスタルドン「禁じられた歌」(★●)
  カリファーノ/カンニオ「恋する兵士」(◆●)
  モドゥンニョ「ヴォラーレ」(●◆★)

アンコール
  「ふるさと(日本語)」(●)
  「ヴォラーレ」(●◆★)
  「オー・ソレ・ミオ」(●◆★)

 で、コンサートそのものは、普通に良かったです。生演奏ならではの傷も多少ありましたが、それはご愛嬌って事でネットに書きませんが、まあ、それも含めて、私はたっぷり楽しみました。

 ちなみに、客の入りは…全体の座席の3割程度かな? これ、絶対に赤字だよね。オペラですら7〜8割程度しか入らず(おそらく)赤字なのに、いくら出演者数の少ないガラ・コンサートだからと言って、こんな入場者数では、やっぱり赤字だよねえ…。これじゃあ、来年は、オペラどころかガラ・コンサートもやってもらえないかもしれない…。昔は当地のオペラ公演って、満員が当たり前だったけれど、どんどんオペラに来るようなお年寄りが亡くなってしまい、オペラを見るお客の数が減ってしまったんだよね。やれば赤字なら、主催者的にはやれないだろうけど、そこはチケット代を上げてでもやって欲しいなあっと思ってます(当地のオペラ公演は、都会よりもだいぶチケット代が安いんだよ)。 それにしても、お年寄りの現象は、オペラ公演のみならず、地元のクラシック系音楽公演にあれこれ影響を与えています。いや、まじで、ほんと、ヤバいって!

 それはさておき、その程度の事なら、普段ならわざわざ記事にしない私なのですが、実は今回歌ってくれたテノールのナコスキ氏について書きたいので、記事にしてアップします。

 さて、ナコスキ氏は声の軽いテノールです。ググったところ「オテロ」のカッシオとか「ドン・ジョバンニ」のドン・オッタービオとか「椿姫」のアルフレッドとか「トゥーランドット」のポンとかが持ち役の、主役系も脇役系もやれる、軽めのテノール氏のようです。

 この人の歌い方が、実に独特で個性的で、それに驚かされました。

 普通、テノールという人種は、目立ちたがり屋で他人の注目を集めたがる傾向があります。ですから、やたらと高い音を歌いたがるし、そんな高い音は、声を張って歌うし、それも苦悶の表情を浮かべながら「すっごい大変な事をしてますよ」アピールも忘れません。

 それがテノールの標準、デファクト・スタンダードです。

 なのに、ナコスキ氏は、高音を顔色変えずに歌っちゃいます。声は張りません。苦悶の表情なんて、絶対にしません。それどころか音量すら増やしません。最初っから最後まで、軽くてフワッとした声で、高い音も低い音も、軽々と歌っちゃいます。

 なので、彼の歌を聞いていると、どの歌も簡単に聞こえちゃうんです。実際は、かなり難しい歌を歌っているにも関わらず、ごくごくサラっと歌っちゃうんです。

 驚きました。こんなに自己主張をしない、全然目立たないテノールさんなんて(たぶん)始めて見ました。こういう歌い方もアリなんだなっと、目からウロコがボロボロと何枚も落ちました。

 ナコスキ氏の歌唱を聞いて、Y先生のご指導を振り返ってみると、急にアレコレがつながっていきました。もしかするとY先生は、私をこのナコスキ氏のようなタイプのテノールに育てたいのかもしれない…と思いました。

 ナコスキ氏の声は極めて軽いです。でも、全然不快ではありません。軽く歌っていますが、基本の声量はかなりあるので、軽く歌っても、全然聞こえます。声は張らないので、声に凄さはありませんが、声はクリアで滑舌が良いです。実にテクニカルでなんでも器用に歌っちゃいます。こういうタイプのテノールは、日本には少ないし、世界でも主役クラスのテノールはこういう歌い方をしません。

 おそらく、ナコスキ氏は、大きな舞台では脇役を、小さな舞台では主役をやる、歌劇場では便利に使われているテノールなのではないかと思います。例えば、今回の「椿姫」公演では、ヴァルガス氏がアルフレッドを歌う時は、ナコスキ氏は脇役テノール(ガストーネ子爵とかジョゼッペとか)を歌い、ヴァルガス氏がお休みの時は、ナコスキ氏がアルフレッドを歌う…なんて事をやっていそうです(調べたら、実際にやってました)。

 主役も脇役もこなさなければならないため、テクニックはちゃんとしていないといけないし、なんでも歌えるのは、そのせいではないかと思うのです。

 ナコスキ氏の歌唱を生で聞けて良かったです。こういうテノールもいるんだなって思いました。ナコスキ氏の歌唱を参考に、盗める所は盗んで、少しでも歌が上達できたらいいなあと思いました。


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posted by stone at 04:00| Comment(0) | 歌劇
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