2019年12月02日

メトのライブビューイングで「マノン」を見てきました

 「マノン」です。プッチーニ作曲の「マノン・レスコー」ではなく、マスネ作曲の「マノン」です。ちなみに、フランスオペラです。

 実は、プッチーニのものも、マスネのものも、原作は同じ、アベ・プレヴォーによる小説「ある貴族の回想と冒険」の第7巻「マノン・レスコー」です…が、登場人物もマノンとデ・グリュー以外の人物は何かしら異なるし、ストーリーも似ているようで、どこか違います。ちなみに、原作小説はあちらでは有名な作品なので、この二人以外の作曲家もオペラにしていますし、映画化やバレエ化、ミュージカル化等もたびたびされています。それくらい有名な原作です。

 プッチーニとマスネの関係に絞って書けば、マスネの方が16歳年上だし、作品もマスネの方が9年早く発表しています。で、マスネの「マノン」は当時から大人気で、つまり、プッチーニの方が後追いです。

 両者の違いは…と言うと、使用言語以外だと、マスネの方はストーリーが連続していて、よく分かりますが、プッチーニの方は場面と場面が飛んでいて、その間のストーリーも特につながりが強くありません。まあ、プッチーニの方は「原作は有名だから、当然、ストーリーはみんな知っているよね」という前提がありそうです。音楽的には、マスネの方がオシャレで上品ですが、プッチーニの方は、いかにもヴェリズムって感じで、音楽は激しいです。あと、上演時間がマスネは約3時間でバレエ付き。プッチーニは2時間で映画並みと言った違いもあります。

 それらはさておき、メトの上演ですが、実に素晴らしかったですよ。

 指揮:マウリツィオ・ベニーニ
 演出:ロラン・ペリー
 マノン:リセット・オロペーサ(ソプラノ)
 デ・グリュー:マイケル・ファビアーノ(テノール)
 レスコー:アルトゥール・ルチンスキー(バリトン)

 とにもかくにも、マノン役のオロペーサがとてもとても良かったです。この上演は、オロペーサを見るための上演であったと言っても、過言ではありません。

 オロペーサは実に美人です。マノンという女性はファム・ファタールですから、美人が演じないと説得力の無い役ですが、その点、オロペーサは適役です。さらに言えば、美人の上に(童顔なので)可愛くもあり、ほんと適役です。声も若々しくて、演技力も抜群で、本当にマノンという役がぴったりです。

 ただ、ちょっとだけ気になったのは、彼女、おへそから上はスレンダーなのに、実に見事な下半身デブなんですよ。お尻とか太ももとか、そりゃあダイナミックなのよ。実に不思議な体型だなあ…と思っていたら、彼女、実は10年ほど前までは体重が95Kgもある、ウルトラデブだったそうですが、それを55Kgまで落としたんだそうです。なぜ、そんな事をしたのか…と言えば、太っている事が理由でオーディションに落ちまくったからなんだそうです。

 実際、彼女はアメリカ人で、メトの養成所出身なのですが、養成所を出ても全然役がもらえずに、なぜ自分は役がもらえないのかと関係者に尋ねたところ「それだけ太っていてはダメだよ」と言われてしまい、そんな馬鹿な!と思って、ヨーロッパに活動場所を移しても、やっぱり太っている事が原因で役がもらえず、そこで一念発起してダイエットをしてやせたところ、仕事がバンバン入るようになったんだそうです。で、やせて売れっ子になったので、この度、メトに里帰りとなった…という事なんだそうです。

 ちなみに、彼女のダイエット方法は…マラソン。まあ、日本流に言えばジョギングなんでしょうが、とにかく走って走って走りまくったんだそうです。売れっ子になった今でも、毎日のように走っているんだそうです。走ることで体重を維持しているそうなのです。しかし、走っている割には、なぜ下半身だけが太り続けているんだろ? 走っていたら、むしろ下半身からやせそうなんだけれど…。

 ちょっと前まで、オペラ歌手は太っているのが当たり前だったのに、世の中って、変わるんですね。ちなみに、メトで大活躍しているデボラ・ヴォイトは、ロイヤル・オペラを太り過ぎという理由で解雇された事があるそうです。で、ヴォイトは、その契約解除金で胃のバイパス手術を受けて、やせて、イギリスでも役をもらえるようになったんだそうです。うーん、太っているオペラ歌手ってのは、もはや時代遅れなんでしょうね。

 メトの上演の話に戻ります。

 オロペーサのマノンがあまりに素晴らしいので、ついつい他の人たちの事を忘れてしまいがちですが、その他の歌手たちも、水準以上の歌唱と演技で、本当にスキのない上演でした。ルチンスキーが演じるレスコーは、実にクズっぽくって面白かったです。ただ、私的に気になったのは、テ・グリューを演じていたファビアーノが高音のppを全部ファルセットで歌っていたのが、気になりました。「ファルセットで逃げんなよ〜」と厳しい事を思ってましたが、たぶん、そんなところを気にするのは私くらいだろうなあとも思いました。

 誰が演じていたのか分かりませんが、もてない君であるギヨーの小悪人ぶりもよかったし、プゼット、ジャポット、ロゼットの女声3人組も実にコケティッシュでよかったです。私の好みで言えば、テ・グリューの親父さんは、もう少し威厳がある方が好きです。

 この上演は、おすすめですね。DVDになったなら、購入しても損しないと思いますよ。


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posted by stone at 04:00| Comment(0) | 歌劇
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