2020年09月16日

メトのライブビューイングで「アンナ・ボレーナ」を見てきた その1

 アンコール上映で、2011年シーズンの「アンナ・ボレーナ」を見てきました。スタッフ&出演者等は以下の通りです。

指揮:マルコ・アルミアート
演出:ディヴィッド・マクヴィカー

アンナ・ボレーナ:アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)
ジョヴァンナ・セイモー:エカテリーナ・グバノヴァ(メゾソプラノ)
エンリーコ国王:イルダール・アブドラザコフ(バス)
リッカルド・ペルシ:スティーヴン・コステム(テノール)
スメトン:タマラ・マムフォード(メゾソプラノ)

 この作品は、作曲家ドニゼッティの「チューダー朝三部作」の一つで、イギリスのチューダー朝(あれこれスキャンダラスな王朝だったようです)をネタにして書いた、3本のオペラのうちの一つです。ちなみに、あとの2つは「マリア・ストゥアルダ」と「ロベルト・デヴェリュー」です。

 この「アンナ・ボレーナ」は、アン・ブーリン事件をネタにしています。人名は変えられているので、下に書いておきますね。

アン・ブーリン -> アンナ・ボレーナ
ジェーン・シーモア -> ジョヴァンナ・セイモー
ヘンリー8世 -> エンリーコ国王
リチャード・バーシー -> リッカルド・ペルシ

 これでイギリス史に詳しい方は「ははん」と思われることでしょう。私にはなんのこっちゃって感じですが。

 ちなみに、オペラには名前だけで登場しない「アラゴンのお方」は“キャサリン・オブ・アラゴン”の事です。元スペイン王女で、ヘンリー8世の最初の妻です。アン・ブーリンの前にヘンリー8世の奥さんだった人です。ヘンリー8世はアン・ブーリンと結婚するために(ってか、キャサリン・オブ・アラゴンと離婚するために)ローマ・カトリックと袂を分かち、イギリス国教会を作ったと言われています。なにしろ、ローマ・カトリックでは離婚は認められないからね。それにしてもすごいなあ。

 で、ヘンリー8世とキャサリン・オブ・アラゴンの子がメアリ1世(ブラディ・メアリという二つ名があります)で、ヘンリー8世とアン・ブーリンの子がエリザベス1世(こちらには処女王という二つ名があります)なんです。

 そしてヘンリー8世亡き後、1代(エドワード6世)はさんで女王となったメアリ1世は、カトリック復古を推し進め、イギリス国内に宗教的な対立を生み出してしまいました。で、これを収めたのが、エリザベス1世って事になります。

 そのエリザベス1世に対して、ブラディ・メアリではないメアリ1世(スコットランド女王。スコットランド王ジェームズ5世とメアリ・オブ・ギーズの娘)というのがいて、イングランド女王であるエリザベス1世の正当性を認めずに権力闘争を起こしてしまいます。で、負けちゃって、その晩年の時代をオペラ化したのが「マリア・スチュアルダ」です。

 で、最後に歴史の勝者になったはずのエリザベスの晩年のドロドロな私生活をオペラにしたのが「ロベルト・デヴェリュー」なんですね。

 ちなみに、エリザベスの跡をついで、イングランド王になったジェームズ6世は、実はマリア・スチュアルダのメアリ1世の子であり、イングランド王のついでにスコットランド王にもなっちゃって、イングランドとスコットランドの統一王になり、その後も子孫が繁栄して、今のイギリス王家につながっていきます。

 そうなると、メアリ(もちろんブラディじゃない方)とエリザベス、どっちが勝ったんだか分かりません。

 ちなみに、チューダー朝とは、ヘンリー8世の父親、ヘンリー7世からエリザベス1世までの時代を言います。ずばり、オペラ化された時代ですな。

 ちなみに王朝とは男子直系による家族で王を引き継いでいくやり方で、男系が途絶えて(女性が王になると男系が途絶える事が多いです)他家から養子を迎え入れたり、女性王の子が次代の王になると、王朝が変わります。

 日本の天皇系はずっと同じ王朝(かな? 家系図を見ると必ずしもそうとも言えないような気がしないでもない。例えば継体天皇とか後小松天皇とか後花園天皇とか光格天皇とか…ねえ)なので比較できませんが(王朝ではありませんが)徳川将軍家で言えば、

@本家徳川家 徳川家康(初代)〜徳川家綱(4代)
A館林徳川家 徳川綱吉(5代)
B甲府徳川家 徳川家宣(6代)〜徳川家継(7代)
C紀州徳川家 徳川吉宗(8代)〜徳川家治(10代)
D一橋徳川家 徳川家斉(11代)〜徳川家定(13代)
E紀州徳川家 徳川家茂(14代)
F一橋徳川家 徳川慶喜(15代)

 ってな感じで養子を親戚から迎えていますので、王朝(?)が変わってます。つまり、徳川家の場合は男子直系が途絶えてしまうたびに、親戚から男子を養子に迎えて将軍職を繋いでいったのです。ま、そもそも日本には“王朝”という発想はないし、みんな“徳川家”なので、親戚を含めた大家族で将軍職を守っていったとも言えますが。

 あれ、オペラ本編に入らないうちに、こんなに書いてしまいました。ううむ、オペラ本編については、明日にします。しばし待たれよ。

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posted by stone at 04:00| Comment(4) | 歌劇
この記事へのコメント
すとんさん、こんにちは。
>このメアリとエリザベスのドロドロな権力争いがオペラ「マリア・スチュアルダ」です。
これは違います。

「マリア・スチュアルダ」はイギリスの王位継承権があり、生まれてすぐにスコットランド女王となってフランス王妃となるも、宗教争いに巻き込まれて最終的にエリザベスに処刑された「メアリー・スチュアート」です。
キャサリン・オブ・アラゴンの娘のメアリーはプロテスタントを迫害したことから「ブラディ・メアリー」で有名で、正式には「メアリー・チューダー」と呼ばれていますね(ちなみに「ドン・カルロ」の継母で、フィリポ王と結婚しています。パチーニという人がオペラ化しています)。彼女が王位に就く時は「ジェーン・グレイ」という女王を処刑しています。

「マリア・スチュアルダ」のメアリー・スチュアートは、マイヤベーアの「ユグノー教徒」に出て来るマルグリットとか、「ドン・カルロ」のエリザベッタとは義理の姉妹の関係ですね。

あと、キャサリン・オブ・アラゴンはサン=サーンスがオペラ化しています。

オペラの世界は狭いです。
Posted by ドロシー at 2020年09月16日 17:11
ドロシーさん、感謝です。

 私の不勉強で、あっちのメアリとむこうのメアリがごっちゃになっちゃったようです。いやあ(ボリボリ)。もっと真剣にイギリス史も勉強しないと、恥かきます(汗)。反省。

 で、あっちのメアリとむこうのメアリの区別をつけて、記事本文を書き直しておきました。間違いのご指摘、重ね重ね感謝です。

 それにしても、この頃のイギリスには有名なメアリがたくさんいて、迷惑っす。もう、間違えていないよなあ(汗)。
Posted by すとん at 2020年09月16日 20:26
訂正されたのですね。
ありがとうございます。

>有名なメアリがたくさんいて、迷惑っす。
それよりも、ヘンリー八世って、よく同じ名前の女性と何回も結婚できるなぁって思いますね。
Posted by ドロシー at 2020年09月16日 22:24
ドロシーさん

>それよりも、ヘンリー八世って、よく同じ名前の女性と何回も結婚できるなぁって思いますね。

 それはおそらく、それ以前にイギリス人(英語圏って意味です)の名前のバリエーションが少ないからだろうと思います。実際、イギリス人って、日本人とは比較にならないくらいに名前の数が少ないです。少なくて不便だから、ニックネームなる別名が普及するんだろうと思います。もしかすると、テューダー朝がらみで出てくるメアリさんたちも、実はニックネームは違っていて、きちんと区別されていたとか?(私には分かりませんが)。
Posted by すとん at 2020年09月17日 10:30
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