前回の続きです。
現状優先か、それとも未来指向か
フルートは一本買えば、しばらく使うことになります。そして、人は変わります。成長もすれば老いもします。今を優先して買うか、将来的なことを考えて買うか、それはあなた次第でしょう。
今を優先する…今の自分にピッタリする笛を選ぶことです。フルートの経験年数もある程度になった人なら、これで良いでしょうね。
将来的なことを考える…若者やフルート経験の浅い人は、成長分を見越して買う必要があるかもしれません。そうしないと早晩またまたフルートの買換えになってしまうかもしれません。フルートは高価な楽器ですから、そうそう何本も買い換えるわけにはいかないでしょうから、なるべく買換えの本数が少なくなるように考えて買い物をする必要があります。
また、ある程度の年配者なら、老いの問題があります。年を取っても長くフルートを楽しむために、今よりも吹きやすい、音の出しやすいフルートに買い換えるというのもありえます。それはダウングレードではなく、人生が新しい局面に突入しただけの話です。
Eメカは必要?
悩む人多いですよね。でも話は簡単なんですよ。「Eメカは不要」と考えていなければ、付けておけばいいのです。Eメカなんて、付いていても困るものではありませんから。むしろ将来「ああ、Eメカ付きのフルートにしておけばよかった」と後悔することの方がイヤでしょ。だから、Eメカ不要論の方以外は、Eメカをつけておきましょう。
Eメカを付けるとフルートが重くなるとか、Eメカ付けると音の響きが変わるとか、そういう人もいますし、実際そうなのでしょうが、その件については、Eメカ付きのフルートで試奏して自分が納得できれば、クリアでしょ。フルート自体の重さとか音の響きなんて、そのフルートの個性ですって。無問題ですよ。
あるいは逆の選択肢として、わざとEメカのないフルートを選ぶという方法もあります。と言うのも、オプションとしてのEメカって、実はそれなりのお値段がします。そこでEメカを辞めて、その分のお金で、もう少し高価なグレードの高い楽器を選ぶということができます。その辺をどう考えるかは、あなた次第です。
ですから、Eメカ以外の各種ギミックについても同様です。「不要」と思っていないなら、お財布と相談して、可能ならば付けときましょう。それが原因で後悔する方が勿体ないです。しかし、その分の投資で楽器のグレードアップが図れるなら、そちらを考えるのも一手です。
ちなみに、私のアゲハには一切のギミックはついてません。すっきりしたもんです。だって笛先生がEメカ不要論の先生だし、私自身、Eメカの分でグレードアップを考えた人ですから。
リング式かカバード式か
リング式かカバード式かで悩んでいる人も、好きな方を買えば良いと思う。リング式にはリングをふさぐ部材(なんて言うの?)もあるから、当座の心配はいらない(ただし、できるだけ早めに部材を取り除く方向でがんばった方が何かと良いらしい)。インライン・オフセットの違いも同様。少しでも心魅かれる方を買っておきましょう。あとはどうにでもなると思いますよ。ただし、本当に悩んでいるなら、カバードのオフセットにしておくのが無難でしょう。だって、リング式のインラインって、やっぱり楽器としての扱いが多少難しくなると思いますよ。
ドゥローン式(引き上げ式)か、ソルダード式(ハンダ付け式)か
同じ規格のフルートでもトゥローン式よりもソルダード式のフルートの方が高価なので、ソルダード式の方が良さそうな気がしますが、価格差は楽器としての性能差というよりも、製造工程の差から来るものです。つまり、ソルダード式の方が手間がかかるので、その手間賃の分、高価というだけの話です。ドゥローンとソルダードで違いがないわけではありませんが、それにどれだけの意味を見つけられるかという事と、価格だけの価値を見いだせる事ができるかが、問題だろうと思います。
私は、ソルダードの方が音の立ち上がりが良い分、若干音が固めに思えました。と言え、それは比較すれば…の話で、それほど大きな違いだとは思いませんでした。あと、一般的にソルダードの方が吹き心地が重いと言いますが…私にはその差は分かりませんでした。
現代フルートは、元々ソルダードで作られていたもので、ドゥローンは比較的新しい技術だそうです。ですので、多くのメーカーでプロ向けの高級機種になると、ドゥローン式ではなくソルダード式になります。結果、多くのプロは、ソルダード式のフルートを使っています。ただし、ムラマツフルートは、総銀の1機種を除き、プロ用も含めてドゥローン式なので、ドゥローン式がダメというわけではないと思います。
この問題も、結局、お店に行って試奏すれば、簡単にクリアできる問題なので、悩む暇があったら、サッサと試奏をして、その違いを感じてきてください。
試奏して、吹き比べてみて、ソルダードの方が良いと思えば、多少高価だけれどソルダードにすれば良いし、ドゥローンの方が好みだなと思えばドゥローンを買えばいい。違いを感じないとか、違いは分かるけれど気にしないとかなら、安価だし(ハンダがはがれるなどの)トラブルも無いので、ドゥローンにしておけばよい。それだけの話です。
使用目的は合奏か? 独奏か?
この点を考えずにフルート選びをする人がいます。それはそれで良いのでしょうが、主な使用目的が決まっているなら、それにふさわしい道具を選ぶのは大切な話だと思います。それにやはり合奏と独奏では、フルートに求められるものは自ずとが違うでしょ。
合奏で要求されることは、ピッチが正しいこと。その団体のカラーに合った音色であること(またはその団体で多く使われているメーカーのフルートであること)。大きな音が出せる楽器であること。その三点でしょう。そこを踏まえるならば、実はそれほど多くの選択肢は残されていないと思いますし、案外、高価なフルートにはならないと思います。
いくら素晴らしいフルートであっても、その団体の中で、音が浮いてしまって、周囲の音に溶けなかったら「アンサンブルぶちこわし、お呼びじゃないよ」になりますから、注意注意。基本的には、倍音が豊かで、高音になっても柔らかな音色の笛がいいでしょうね。
独奏で要求されることは、個性と美しさです。それを考えると何でもありなので、お財布が許す限り、わがまま贅沢にフルートを選択するとよいでしょう。彫刻などもたくさん入れてもいいかもしれませんよ。
もっとも、アマチュアの場合は、独奏と言ってもピアノとのアンサンブルが多いと思います。ピアノは平均律ですから、平均律で設計されたフルートがアマチュアのソリストには使いやすい笛になると思います。
主に吹くのは、ポップス? クラシック?
ポップスの世界では、フルートは小音量楽器なので、マイクの使用が前提になります。そうなると、マイクのとおりの良い音、つまり過度に大きな音がせず、倍音も少なめの細くて硬い感じの音の方が何かと便利です。
一方クラシックでは、マイクの使用はありえませんので、大きな音量で倍音豊かな美しい音色の楽器が求められます。美しい音色…大切ですよ。いくら練習を重ねて上手になっても、その楽器が本来持っている以上の美しい音は、どんな名手にも出せませんから。
迷ったら、クラシック向けの楽器を選択して、マイクを使用する時は奏者側の工夫(例えば口の中を狭くして、わざと笛の音を貧弱にしてマイクに乗りやすい音にするとか)で乗り切るというのも、一つの方法です。
それでは、いくらぐらいのフルートを買うべきか?
ずばり大人は「今の自分が出せる最大の金額で、贅沢なフルート(一生モノ)をババンと買う」ことをお薦めします。贅沢なフルートを買って、贅沢な気分を満喫しましょう。所有する喜びも、また趣味の大切な楽しみです。
大人になれば人生の有限性を感じることでしょう。こまめにフルートを買い換える楽しみもありますが、それよりも有限な時間の中で、音楽そのものを楽しむことに集中しましょうよ。
あと、高い楽器を買うと、下手くそを楽器にせいにはできなくなります。練習に励むしかなくなるのも、大人向けと言えましょう。[大人はすぐに言い訳しますから(笑)]
一方、子どもや若者は話が別。まず、フルートは贅沢品であることを知り、その費用を捻出するために、大人がどれだけ大変な思いをしているかを知らないといけない。その上で買い与えられた楽器なのだから、たとえそれが実用品レベルの楽器であったとしても、文句をいうどころか感謝をしないといけない。どうしても、贅沢な楽器が欲しいなら、大人になった時に、自分でお金を稼いで買いなさい、以上。
結論
試奏をしてみて、気に入った楽器、これだと思った楽器、惚れた楽器を買いましょう。そういう楽器と出会えなかったら、今、無理して買う必要はないでしょう。またの機会にすればいいと思います。それでもどうしても、今すぐフルートが欲しければ、その売場にある一番安い国産品を買っておくのが無難です。国産品であれば、どんなに安くても十分に使えるし、音楽を奏でることができますから。そして浮いたお金でおいしいもので食べた方か幸せというものです。
それでは、みなさんに幸せなフルートライフがありますように。
ではでは。