知り合いにバレエ関係の人がいるので、その人にアレコレ解説してもらいながら、某バレエ団の「くるみ割り人形」を抜粋で見てきました。
私は元々、バレエは嫌いじゃないし、教師をやっていた頃の教え子には、有名なバレリーナになった子が何人もいて、その教え子たちのご招待で彼女たちの舞台を見ることもあった私ですが、今までは、私自身がクラオタという事もあって、バレエを鑑賞する姿勢が“音楽主体”で、踊りの方は「よく動くなあ…」程度にしか見ていませんでした。ダンサーからすれば、実に見せがいのない客だったわけです。
現金なもので、社交ダンスを始めて、自分のカラダを動かす事が、どれほど難しいかという事実を今更知り、その困難な現実を直視するようになり、ただ“立つ”“歩く”などと言った基本動作が、どれだけ困難で、今まで自分は何もできていなかった事を知るようになりました。
そんな段階にようやく達する事ができた私が、ある意味、心を入れ換えてバレエを見たわけです。本当に、今までは『目には映れども何も見えず』状態だったんだなあと、改めて思い知りました。だって今回の私は『奇跡の現場に立ち会った少女』のようなショックを受けて、ただただ舞台を凝視してしまったからです。
いやあ、すげえ…。バレエダンサーってハンパない…。彼らはまさに超人だなあ…。私は今まで何度もバレエを見ているのに、本当に何も見えていなかったんだなあ…と思いました。
跳ぶ。回る。止まる。振る。蹴る。伸ばす。 …すべてが一瞬の動作です。サッと動いて、ピッと止まる。拍の頭で動いて、拍が終わる頃にはすでに動き終わって止まっているのです。そして、これら一連の動作を、リズミカルに、同時に、レガートに行っているわけです。実に奇跡のような超人技の連続で、見事なものです。
そして、これらのバレエの動きの延長に、あらゆる芸術的なダンスがあるって事が直観で分かりました。ちまたで踊られているジャズ系のダンスも基礎はこれ。全盛期のマイケル・ジャクソンの神掛かったダンスだって、ルーツはこれ。クラシックバレエなんですよ。クラシックバレエの動きの一つ一つが基礎基本になって、見事にポップ系のダンスにまでつながっている事が分かりました。
そして、私が今、学んでいる社交ダンスだって、その動きのルーツはこれ、クラシックバレエ…ですよ!
それにしても、激しく動いているのに、なんて静かな動きなんだろ、バレエって。
社交ダンスのレッスンを受けていて「ナチュラル・スピン・ターンが難しい(涙)」なんて言ってる、我が身のレベルの低さが情けない。『月とスッポン』とはよく言ったものです。
あのバレエダンサーたちから見れば、私などは、立つ、歩く、などの基本的な動作すら、全然できてないじゃないか? この違いは一体、何?
「私は三歳からバレエを始めて…」と、私にバレエを説明をしてくれた人が言ってました。聞けば、バレエダンサーさんたちは、誰もが物心がつく前から踊っているのです。いや、物心がついてからでは、もう手遅れのようなのです。そういう点では、バレエの世界は、音楽の世界で言うところの、ヴァイオリンの世界に通じるのかもしれません。
バレエダンサーになろうと思ったら、物心つく前から踊り始め、学齢期になれば、登校前の早朝レッスン、下校後の夜間レッスン、長期休暇の海外レッスンは当たり前。学校に行ってる時間と寝てる時間以外は、ずっと踊っていて、人生の大半をバレエに捧げて、ようやくこの世界の入り口に到達できるかどうかっってぐらいなのだそうです。
アラフィフになって、社交ダンスを始めたオジサンと比べる事自体が、チャンチャラ可笑しい事かもしれません。でも、人生をバレエに捧げてしまうと、人間はここまで踊れるようになれるんですね。
「しなやかな動きはしなやかな筋肉で踊るものです」 私はもちろん、あの子たちのレベルには到底、達する事はおろか、近づくことすらできないだろうけれど、でも、私のレベルでの技術向上は目指したいです。私の筋肉は、しなやかであるだろうか?
「ピアニストは手の指の筋肉を鍛えるけれど、バレエダンサーは足の指の筋肉を鍛えます」 足の指を器用に力強く使える事がいかに大切なのかを教えてくれました。私は…一応、足の指は任意で動かす事くらいできます(一応、足の指でモノはつかめるし、ジャンケンもできる)が、力強いかと言えば全然か弱いわけだし、器用かと言えば全然不器用。彼らの超人的な動きは足の指の力強さが生み出しているわけで…私ももっと足の指の筋肉を鍛えていかないといけないんだろうなあ…。
「バレエの動作の一つ一つにはすべて意味があるんです。意味のない動きは一つもないんです」 考え無しで動いてしまっている…なんて、うかつな事はバレエダンサーには無いそうです。振り返ると、私の動作の、なんと“考え無し”な事か! 何も考えずに腕を出し、何も考えずに足を進め…、それでは美しい動きなどできるわけもない。
もちろん、バレエと社交ダンスは、ジャンルが違うダンスだけれど、その基本にある、“自分のカラダを自分の意のままに美しく動かす”という点に置いては、全く同じなはず。バレエダンサーたちは、立つ、歩く、腕を伸ばす、足を伸ばす、回る、これらの一つ一つの動作のパーツが実に美しい。パ・ド・ドゥなどは男女二人一組で踊るわけだから、ある意味、社交ダンスにも通じるダンスなのだろうが、実に美しい。
バレエ…やりたい! でも、絶対に無理って、さすがに分かります(笑)。でも、やりたい。あの“美しさ”には、心が奪われます。
バレエが無理なら、その代わりと言っては語弊があるけれど、バレエのような美しいダンスを、社交ダンスで踊りたい。
今の社交ダンスの流れは「社交ダンスはスポーツである」という方向のようだけれど、私はそんな、汗臭い力強さを見せつけるようなダンスではなく(実際は汗まみれなんだろうけれど)汗を感じさせず(実際は力強いカラダが必要なんだろうけれど)まるで空気のように自然でしなやかな、そう、ひたすら“美しいだけのダンス”を踊りたい、と思いました。
すごく難しくて大変な事をやっているのだけれど、見ている人には、その難しさや大変さをちっとも感じさせないような、ただただ、美しくて見事なダンスを踊りたいです。つまり、初心者の癖に生意気だけれど……派手で激しくて上手いダンスよりも、地味で静かだけれど美しいダンスが踊りたい…そう切実に思いました。
まずは、立ち姿、歩き姿などの基本的な体さばきから、美しくならないとダメだな。そのためには、もっともっと、動作にキレが必要だなって思いました。そのためには…たぶん…ダンスに必要な筋力が全然足りないんだな。
…よし、動作にキレのあるデブなオヤジを目指そう! そのためには、美しく立って、美しく歩く…そのあたりから始めよう…と思いました。アラフィフおやじだけれど、目指せば、多少なりとも、理想に近づける…よね?
蛇足 実は妻はバレエが大好きなんですが、私は今まで、なぜ彼女がバレエに惹かれるのかが、よく分かりませんでしたが、今は何となく分かります。ダンスって音楽同様に、美しいもの…だったんですね。
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